VSL#3について |
VSL#3は、一包あたり4500億個の生きたバクテリアを含む高力価のプロバイオテック(プロビオテック)です。
海外では、消化器疾患の治療薬の開発を手がけるInKine Pharmaceutical 社とSigma-Tau Pharmaceuticals社がVSL#3を共同販売しています。
InKine社はSalix Pharmaceuticals社と合併しようとしており、この合併が承認されれば、胃腸病学に特化した会社としてはアメリカ最大の製薬企業が誕生します。VSL#3は、InKine社の主力製品の一つです。
VSL#3は、健康に良いとされるバクテリアで胃腸の壁を保護し、炎症を誘発する物質から腸を守る働きがあります。
これまでに、潰瘍性大腸炎と回腸嚢炎に対する有効性を示した試験結果が発表されています。
■潰瘍性大腸炎
・5-ASAを服用できない潰瘍性大腸炎において、VSL#3を服用すると腸に有益なバクテリアを増え、寛解状態の維持を助けるという結果が得られています(Aliment Pharmacol Ther 13(8):1103-1108. 1999)。
・従来の治療に反応しない活動性の潰瘍性大腸炎患者に対して、VSL#3を6週間にわたって1日2回投与したところ、53%の患者で症状が寛解しました。また24%では部分的な症状改善が認められました。 寛解と部分寛解をあわせると77%がVSL#3が有効であったという結果となっています(America Journal of Gastroenterology. 2005; 100:1539-1546)。
・低用量のbalsalazide(2.25g)とVSL#3を併用すると、寛解率が改善し、寛解までの時間が短くなる(=治癒が早まる)可能性が示唆されています(Med Sci Monit. 2004)。
■回腸嚢炎
・少し古いですが、1999年のコクランライブラリー(Cochrane Library)において、「VSL#3 による経口共生細菌治療は緩解状態の慢性回腸嚢炎の緩解維持療法として有効であると考えられる」とコメントされています(Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD001176.)。
・回腸嚢に伴う下痢や切迫を減らすという結果が得られています。(Gastroenterology 119(2):305-309. 2000、Gastroenterology 124(5):1202-1209. 2003b、Gut 53(1):108‑114. 2004、American Journal of Gastroenterology. 2004)
・VSL#3は、消化器領域における世界的に有名な学会・American College of Gastroenterologyのガイドラインでも回腸嚢炎 (ポーチス)を対象にした試験結果が紹介されています。(Ulcerative Colitis Practice Guidelines in Adults (Update): American College of Gastroenterology, Practice Committee. American Journal of Gastroenterology. 2004)
・また、ドイツのGerman Association of Gastroenterologyでも試験結果が紹介されています。(Diagnosis and therapy of ulcerative colitis: results of an evidence based consensus conference by the German Society of Digestive and Metabolic Diseases and the competence network on inflammatory bowel disease. 2004)
■まとめ
上記より、VSL#3は潰瘍性大腸炎や回腸嚢炎に有用である可能性があります。
ただし、上記の試験はいずれも小規模試験であり、現時点ではVSL#3に関して明確な結論は得られていないのが現状だと思います。
最近2005年10月にアメリカの研究者等がAliment Pharmacol Therに発表した試験では、VSL#3の回腸嚢炎の寛解維持に関して否定的な結果となっています(Aliment Pharmacol Ther. 2005 Oct 15;22(8):721-8.)。